講演会 ことばと文化から見た 「環境」 あるいは 「エコ」
       ―「環境」 を越えて―  を受講して             市民研究員  綱島 勇
 
 平成22年2月26日(金) 午前10時から吹田市内本町コミュニティーセンターにおいて、吹田市と(財)千里リサイクルプラザが主催する 内田慶市先生の講演会が、62人の参加者のもと開催されました。
内田先生は関西大学外国語学部の教授で、中国文学を専攻されています。昨年度までは吹田市教育会委員としても活躍され、委員長も勤められました。今年度から当財団千里リサイクルプラザ 研究所主担研究員として、私たち市民研究員がご指導いただいている先生でもあります。
 最初、「環境」(Environment)という言葉がいつごろから使われるようになったのかということから始まりました。漢字は中国から伝来されたもの、中国歴史書に最初に出てくる環境は「自分たちが管轄する周囲の区域」を意味した言葉であり、現在考えられている人間や生物と関係をもって、直接、間接に影響を与える外界としての環境とは意味が異なります。
 現在意味する環境という言葉は、1900年代の初めに日本人によって初めて使われたものではなかろうかということでした。
  講演される内田先生
   講演をされる内田先生

エコロジー(ecology)という言葉を最初に日本で使ったのは、粘菌の研究で知られる和歌
山出身の「南方熊楠」だそうです。また、南方熊楠は、当時の明治政府による神社合祀政策
 
 
によって、熊野の神社周辺の森林、鎮守の森が伐採されていくことに反対し、自然環境保護運動を展開。エコロジー運動の先駆者といわれ、これによって「熊野古道」は守られたといわれているそうです。
 「エコロジー」という言葉は、「人間と自然環境とのかかわり合いに視点をおいた環境」、又は「環境保護」という意味で使われるそうです。
 一方、「Environment」は「人間を取り巻く、又は人間を除いた自然環境」を意味するそうです。私たちは環境とエコという言葉の意味の違いを意識せずに使用してきたように思います。
 昨年12月に終了したCOP15:コペンハーゲン会議では、各国のエゴのぶつかり合いを私たちは目の当たりにしました。「エコ」と「エゴ」のぶつかり合いは、私たちの周囲にも多く見られます。自分にとって快適なことでも他の人には迷惑なことがあります。
 内田先生は次のように提言されています。
 人によって価値観は異なる。人によって見方が違ってもよい。いま何よりも求められるものは、相手を認めること、多様な価値観を認めること、先ずはここから始めるべきで、「環境」という言葉は、本来「地域」「区域」つまり「国境」「縄張り」意識が初めから存在しており、自己中心の内容を含んでいる。
 今、「周りの」「境界」を越えるべき時ではないか。 演題にある「環境を越えて」というのはそういった意味である。と締めくくられました。
  参加者の様子
     参加者 
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☆22年2月号掲載時の研修講座と今回の一般市民向け講座とほぼ同一内容です。