トルコ紀行 4 〜 旅にハプニングはつきもの 〜

1、足止めをくう
 木立に囲まれたホテルの入り口にさしかかった。急にバスが止まる。濃紺の制服制帽姿の警官が、銃をこちらにむけて立っている。ホテルの玄関前からこの道までぎっしりと高級車が並ぶ。りっぱな体格をした黒い背広姿の男たちが、トランシーバーでやりとりしながらその間を右往左往している。あまりの警戒ぶりに「何事か」と、緊張感がバスの中に走った。待たされること5〜6分。バスはノロノロと玄関へ移動した。
2、人で溢れる眩いばかりのロビー
 重い足を引きずるようにして玄関内に入ったとたん、昼間以上の明るさと、溢れる人の波にたじろいだ私の目に、ボヘミアンクリスタルが幾重にも重なる直径2m以上もありそうな、シャンデリが飛び込んできた。シャンデリアの真下には円形の噴水。左手は2階へと続く、トルコ絨毯を敷いた階段。壁ぎわの蜀台からの柔らかな光で、淡い影が揺らぐ。真っ白なデスターシャ(民族衣装)をまとった端正な顔立ちの紳士たちの周りには、ほのかな甘い香りが漂う。まるで舞踏会場にでも迷い込んだような錯角におちいった。
 時刻は21時。添乗員のOさんは顔を引きつらせ、フロントへと急ぐ。人波をかき分けるように、我が一行も荷物を引きずりながらOさんの後に続く。
3、宿泊できない
 狐目になり、語気も荒く「部屋がない。そんなことはないでしょう」と、書類をフロントにつきつけるOさんに、受付係りは丁重に応対していた。「ちょっと皆さん、このホテルで始めてのイスラムの重要会議が開かれるので、ビップの宿泊確認に時間がかかるそうです。確認が終わるまで、しば    
 

らくあの場所で待っていてください」とOさんが指さした空きスペースは、トイレの入り口だった。
 「部屋の確認?泊まることはもうわかっていたはずだ」と険しい表情や、いらだちの声が聞こえる。イスラムの人々は私たちより長時間待たされているようだが、平常心でいる。バスで待機させられた意味が飲み込めほっとしたものの、我が一行の大人気ない態度に、日本人として気恥ずかしかった。
4、ドアが開かない
 30分ほどして部屋に着く。「やれやれ」と思ったら、今度はドアが開かない。「なんで?」。ふと横を見ると、廊下の電話を使うトルコ人がいる。渡りに船と「ドアが開かず困っている」と話すと彼もドアのことで、フロントに電話をしていたのだ。言葉が不自由だと察したのか、フロントへ電話をかけてくれた。笑顔で「バーイ」と言いながら、自分の部屋のほうへ帰っていった。間もなくボーイが駆け足でやってきた。いくつもの合鍵を試していたがドアは開かない。急ぎ足で廊下の向こうへ消えたと思ったら、首をかしげながら、またいくつもの合鍵を手にやってきた。さっきと同じように合鍵を使い始めた。3回目にすっとドアが開いた。やれやれ。
 翌朝、コンピュターの誤作動で部屋のドアが開かず、ホテルの従業員は上へ下へと、大騒動していたことがわかった。

 国内旅行とは一味違ったハプニングに出くわす面白みが、海外旅行にはある。
 ハプニングをのぞけばさすが5つ星ホテル。設備も接遇も食事も大満足!


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☆HP上の余白5mmです。一部文章を校正しています。
  
 
しみんけんニュース No156