教育分野に疎い私は、昨年、「学社融合」という言葉を知りとても感銘しました。京都の環境市民の主催で11月に行われた岸裕司さんの「できる人が、できるときに、無理なく、楽しく!融合の発想で、楽しく元気なまち育て!」というタイトルの講演会に参加したときに教えていただいた言葉です。いつもごみや環境を考える私にとっては目からうろこの講演でした。それは岸さんの20年ちかい実践から生まれた生きた言葉だからでしょう。
 岸さんは1952年東京生まれ。80年に東京湾の埋め立て地・習志野市秋津にできた団地の完成と同時に家族と転居、86年から秋津小学校PTA会長を含む役員を7年経験され、以後小学校区の生涯学習の充実に努めてこられました。秋津はちょうど千里ニュータウンのようなまちで、東京で働く勤労者のベッドタウンです。
  岸さんがPTA会長になったとき、まず発見されたのは「PTAは専業主婦と呼ばれる時間のあるお母さんがたの集まりで、共働きの家庭や男性は参加できないことに肩身の狭い思いをしている、それは差別だ」ということでした。参加できるお母さんがたは自分たちにばかり責任が回ってくると不満をもち、参加しない人々を責める心が生じて不協和音が生じる。それを何とかできないか。性別、年齢、職種に関係なく、多くの大人が関わることが大事だとの考えたそうです。ちょうど学校で鳥小屋を作ることになり、地域のお父さんがたに頼んだところ、デザイナーや大工さん、建設会社で働く方など、実は地域はさまざまな専門家の集団だということを発見されたのでした。鳥小屋を作ることもさることながら、作業のあとは廃材を利用しての焚き火を囲んでの一杯が楽しみで大勢の人が手伝ったとのことです。
 また、空き教室を利用しての地域の人々のサークル活動で、大正琴の会の音が開け放たれた窓から子どもたちに聞こえ(クーラーが無いので窓を開けなければならないのが幸いしたそうです)、そこから大人と子どもが一緒に楽しむ。子どもの囲碁クラブもサークルのお父さんたちが指導するこ
☆訂正:印刷版で、学舎融合とあるのは学社融合の間違いです
 謹んで訂正いたします。(来月号P8訂正文)

  

とで、子どもたちも大勢のお父さん方から囲碁を直接習うことができ、先生はコーディネートするだけでよく、子どもたちから開放される。岸さんの主張は、「先生はもっといい授業ができるように専念して欲しい、そのほかはすべて地域の大人がするから」というものです。確かに今の先生方は子どもの評価や子どもの心の問題で忙し過ぎます。環境についても上総掘りで井戸を大人と子どもが一体になって掘ったり、その水を利用してビオトープを作ったり、いまはエコスクールを目指しているとのことでした。
 こんな秋津小ですから、卒業生は母校が大好きで、毎年の学園祭には大勢の卒業生が集まり、あげくには秋津で自分の子どもを育てたいと秋津に帰ってくる第二世代も増えているとのことでした。岸さんは「千里ニュータウンなどはまちの中心に商業施設を置くから失敗したのだ。まちの中心は学校であるべきで、そこに大人も子どもも集って、それがまた時を重ねてゆく。世代を通して時をみつめる、そこに学社融合がある」と断言されます。
 いつもごみ問題や環境のことを考えておりますと、人々の生きがいや、共に生きることの素晴らしさを考えるよりも、まず環境を何とかせねば、と考えがちになる私ですが、岸さんのお話しを聞いて、まず人がこのまちで生きてきてよかったなあ、と思えるようなまちをみんなで育て上げる、その中に環境や防災があると、そんな気がしてきました。
 昨今の小学校の不審者侵入の問題や、対する警備員の配置など、人と人の間の塀をさらに高くするありかたに対して、岸さんは「学校に入ってくる人々は皆顔なじみで、だからこそ不審者は入れない。学校を開いてこそ学校は守れる、それが本当のありかただ」と力説されます。
 秋津小学校の環境の取り組みについて、また学社融合について、是非とももう一度、岸さんを吹田にお招きして、大勢の方々とともにそのお話しを聞かせていただき、学社融合を基盤にしたエコスクールの考え方を吹田の地で共有したいものだと思いました。
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☆印刷時文字中サイズ余白5mmです 
  
  
岸さんの「学社融合」のお話を聞いて  三輪信哉