計画について思うこと
                                   主担研究員 三輪信哉
 私たちが未来にむけて何か目標をさだめて行動をするときには、個人であれ組織であれ、まず計画をたてます。たとえば、貯金の計画であるとか、資格を取るための勉強の計画とかです。そこでは何年後かに達成すべき目標をさだめ、それにむかって一年、一年どのような行動を重ねてゆくか、行動を取りかかる前に検討します。そして確実に目標を達成するためには、毎年どこまで達成できたかをチェックして、達成のための方法が達成のためにふさわしいかどうかを点検しなおして、もし目標達成のためにその方法や行動が相応しくなければ、それらを修正して確実に目標が達成するようにします。今や企業をはじめいろんな組織で使われるようになってきた考え方、すなわち「PDCAサイクル」は、私たちが日常無意識にしている「計画」をたてて実行するという人の営みを、もっと厳密に確実にするためのものとして生まれてきたのでしょう。宇宙飛行船を火星に到達させるなどは、精緻な計画とその実行の積み重ねによって初めてなりたちます。
 計画は時には大きな縛りになります。たとえば、ある組織が目標を達成するためには、その組織を構成するメンバーは、無駄を排除して目標に対して自分自身を合わせて行動する必要がでてきます。また目標が達成できていないと、ときには組織そのものが見直されることもあります。戦時下の軍隊は極限のものでしょう。
 縛られるはいやだからと計画をたてなければ、それはそれで進む目的地の分からない船のように、いつもフラフラとただよってしまいます。船のたとえを使いますと、海図を手にしている場合には、とても進むのは容易です。でももしまだ海図が作られていなければ、何度も何度も航海にでて、時には難破し、それでも少しずつ距離を延ばして帰ってきた船の経験を積み重ねて、やがて航路が開
 
 
発されて安心して通れるようになるのでしょう。そのような不安な航海そのものが一つの挑戦と、
命がけの冒険が目的になることもあるでしょう。
 さて、未来の環境をよりよいものとしたいと考えて行動しようとするとき、私たちは未来の姿をまず描かなければなりません。よくやる方法は、先進的な街を見に行くことで、フライブルグ詣でなどは最たるものでしょう。無から有を生み出すことは困難なことですから、このような方法は計画目標を描いたり、実行方法などに関するいろんなアイデアを与えてくれます。
 循環型社会を標榜する日本は、3Rをかかげて走ってきました。私たち個人の、組織の日々の活動や行動は、何を目指し、それをいつどのように顕そうとしているのか、どのような社会が私たちにとっての夢で、その夢を実現させるために、今何をなすべきなのか。
 目を行政に向けてみますと、各市は各々、福祉や教育などもふくむ、最上位の計画として総合計画を作ります。そしてその下位の計画として、たとえば環境基本計画とか、一般廃棄物処理基本計画などを策定します。それらの中で10年後のあるべき街の姿を描き、それが現れるための目標を定め、また時には数値目標を定めて、その目標達成のための実施項目を定めます。そのような行政のたてた目標が具体的に現れるために努力をするのが私たちの活動なのでしょうか。
 私たちはどのようなまちや社会が未来に現れて欲しい、未来の子どもたちに残したいと考えているのでしょうか。「楽」や「美」や「活」などの要素も必要でしょう。未来に向けて進んでいくための夢、姿、目標、またそのための実施手段、経路など、ときには、手を休めて、お茶を飲みながら、あるいはお酒を酌み交わしながら、ワイワイと楽しく話し合う必要がありそうです。
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